「東一」蔵元・五町田酒蔵(佐賀)へ20年ぶりに再蔵探訪してきました!!

更新日:2016/05/12

実は私の日本酒遍歴のルーツと言える蔵元の1つが佐賀県にある「東一醸造元・五町田酒造」です!
「酒友」と言う当時大阪ではまだまだ少なかった「日本酒と焼酎専門店」として立ち上げて約24年。この頃は私もまだ30代半ばで、元大阪国税局鑑定官室長だった、故・永谷正治先生について発酵学を含む日本酒のあれこれを勉強している頃でした。当時永谷先生から「五町酒造(東一蔵元)と澄川酒造(東洋美人蔵元)から久々山田錦育成状況を見るついでに遊びに来ませんか?と言ってるから連れて行け!」と命令が下り、永谷先生を車に乗っけて山口県の東洋美人蔵と佐賀県の東一蔵へと連れて行った事が現在も深い付き合いとなる両蔵元との始まりとなります。

 

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約20年前、東洋美人の山田錦栽培田で、左より勝木技師(東一)、澄川会長(東洋美人)、私、永谷先生

 

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東一山田錦栽培田で、左より勝木技師、永谷先生、私(H15年5月19日)
そして再び約20年振り返りに「東一醸造元・五町田酒造」へ行ってきました。感慨深さ一入でした!

 

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これが20年振りに訪れた東一蔵元、殆ど20年前と変わりなかった。

 

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そしてこれが20年前、永谷先生を連れ初めて訪れた東一蔵元。

最近は日本酒に特化感の強い雑誌などで「佐賀酒が熱い!」と特集され、現在佐賀酒を牽引するのが「鍋島」と言われているが、確かに現在はそうかも知れない!(実は8月に「鍋島・飯盛社長を囲む会」を開催します!)しかし本来「酒造りとは無縁の県」と思われていた「佐賀県」を「吟醸王国の県」としたのは我が師匠・故永谷先生と東一の勝木技師の二人三脚が20年前も前からの努力の結晶の上に成り立っている!
まず「東一」を日本代表酒蔵に押し上げた勝木慶一郎技師について紹介しておきます。「技師」と言う役職の人がいる蔵元は全国酒蔵、約1600蔵のうち多分ここ「東一」だけと思われる。技師とは簡単に言うと、東京の国立醸造試験所や、東広島にある醸造研究所日本醸造協会などの中で白衣を身に付け常に顕微鏡を覗いて酵母などの微生物等の研究をされている、いわゆる「醸造微生物の博士」と思って下さい!
そんなスゴイ博士が国税局ではなく、酒蔵におられるのが「東一」と言う蔵元で、その人こそ勝木技師なのです!
また、現在九州の多くの蔵元の杜氏や社長が勝木技師のことを「勝木先生」と言うほど凄い方になられています。何か申し訳ないのですが、その勝木技師と私が20年来の知り合いで来月6月4日(土)に『東一・勝木技師を囲む会』を開催しますので、絶対に宜しく!!(また「東一の会」でも勝木技師は滅多に出て来ません!)
続いて我師匠、故・永谷先生と東一(勝木技師)との関係についても紹介しておかねばなりません!

 

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今でも勝木技師のデスクの横に貼られている故・永谷先生と勝木技師の山田錦田での写真
私が故・永谷先生と知り会ったのは先生が大阪国税局に赴任してからだが、その前に1987年福岡国税局の鑑定官室室長に就いた時、勝木技師が永谷先生を頼ってからの関係である。
当時、時代は焼酎第二ブームでサントリーらがペンギンのキャラクターを打ち出し「炭酸水で焼酎を割る」つまり「チューハイブーム」の到来であった!九州各県の酒蔵もその影響を受け苦しい状況だった。
その打開策で永谷先生を頼ったのだ。そして永谷先生の「二つの助言」により「東一」ブランドにつながる礎を手に入れる事になる。まず一つは「将来生き残る正しい道は純米酒を造ること。そのために吟醸酒の技法を学ぶべき」と、二つ目は「佐賀県で良い酒が造れないのは米の力の差!つまり山田錦を使用すること」であった。それから勝木技師は永谷先生のおかげで福岡局の審査員として色々な純米酒を利き酒してトレーニングした。
山田錦は蔵の独自性を打ち出すためにも当時県内では事例がなかった山田錦の栽培から開始する事にした。
しかし、山田錦はまだ佐賀県の奨励品種でなかったためそこからのスタートだった。勝木技師の努力の末やっと佐賀県に山田錦の栽培許可が出た。つまり東一の勝木技師のおかげで現在佐賀県は山田錦が栽培出来ているのである!そして永谷先生が勝木技師に手取り足取りして山田錦の栽培方法を伝授していった。
この成功事例より東洋美人(山口)や、秋鹿(大阪)などが永谷先生を頼りに後に続いたのだ!
その後勝木技師は専門仕事柄、山田錦と相性の良い「熊本酵母の培養」の研究に成功して、その酵母を使って自家栽培の山田錦を使って「東一」にしか造れない素晴らしい吟醸酒を開発していった!それから「東一」は全国新酒鑑評会において金賞受賞蔵の常連蔵となっていったのである!!その後、永谷先生は大阪国税局の鑑定官室室長となり大阪では私が弟子となった頃が丁度この頃の「東一」だったのである!!
それ以降、勝木技師は独自で酒造りの最高の技術を完全に身に付け、それを「東一」だけのものとせず、佐賀県の殆どの蔵元にノウハウを教えたり、酒造りにおける機材も開発して佐賀県を吟醸王国に押し上げたのだ。
今年の6月25日(土)酒友で開催する『天山・七田の会』の七田社長や、7月30日(土)開催の『若波・蜻蛉の会』の今村友香杜氏も勝木技師にお世話になった蔵元である。

前置きが少々長くなりましたが、その「東一」の蔵内を紹介していきます!
この日は東一蔵元社長の瀬頭社長に案内して頂きました。瀬頭社長にお会いするのも当然ながら20年振りとなるのですが、初めてお会いした頃はまだ専務だったのですが、会長亡き後は勝木技師の良き理解者として更に「東一」を確固たる蔵元にして来たお方です!

 

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勿論、自社精米しております。メーカーは有名な「新中野」製です。

 

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洗米機は私も初めて見るメーカーの物で「スパイラル吟洗号」と名付けられる物で、やはり原理は「ウッドソン」と同じ!
勝木技師は米作りから手掛ける意義を「あらゆる酒造りの工程を左右するのは原料処理!」と言うだけあって自ら精米してこそ原料米のコンディションを正確に把握できるので、次の工程(洗米、浸漬など)に細やかな指示が出来る。「米の力」を引き出す造りは栽培や精米を通して米と向き合う必要があると言う。

 

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勝木技師設計の「四角形オリジナル箱型甑!」通常、丸筒型甑では米を縦に乗せていく為、蒸しにムラが出来るが、これは横に米を広げていける(米の量に応じて大小4種の大きさの箱がある)ので均一の厚さに張り込めるのだ!
また仕込みが行われる別棟まで移動出来る様にキャスターが装着される。

 

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箱型甑の中はこの様になっている
これからもっと機材を紹介していきますが「東一」の特徴の1つとして蔵内は整然かつ大変清潔に保たれており、道具類、麹室、仕込み蔵などには多くの木材が使用され、ひんやりとした蔵内だが木の温もりを感じるのだ。
また床や梁、発酵タンクの足場にも木を使用し各に柿渋が施されている!

 

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酒造りの道具(桶、褶棒、竹ざる他)には木製の物が多い。竹ざるにしても勝木技師設計の物を使用!

 

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自動放冷機

 

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いくつかある麹室内も木製で、この製麹箱は「米焼酎用」

 

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吟醸類は桶口もやしの「山田錦用ダイヤモンド印種麹菌」を使用している。

 

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こちらは通常の純米類らに使用する種麹菌

 

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麹室は2階にあるが、そのフロアは全て柿渋が施される。(出麹の放冷中)
そしてフロアの白い線の長方形のフタを開けると…

 

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この様に仕込みタンクの上部が現れ「褶入れ作業」が出来る様になっている。つまりこの階下が仕込み室となっており、純米酒等を造っている。

 

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ここは吟醸用仕込み室

 

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吟醸用の仕込み室を別角度で見た様子

 

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吟醸用仕込みタンクの上部の様子。全てタンク内の醪温度が管理出来るシステムになっている!

 

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実は上写真に見える青いタンクの下底部分は円錐になっていて、醪が発酵し出し活発になると自然に対流が起こるように設計されている。勿論勝木技師オリジナル設計による仕込みタンクである!

 

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これは「東一・純米焼酎」用の蒸留機

 

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これも勝木技師オリジナル設計による「ビン燗用箱」で全ての位置で同じ温度になるように出来ている。
保険をかけて63℃で火入れを行う。

 

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タンク貯蔵室、温度調整し易いようにセミ・サーマルタン仕様となっている。

 

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冷蔵貯蔵庫の数々

 

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搾りは基本「ヤブタ搾り」をする。私が20年前やはり蔵内を見せてもらったが、当時はまだ現在の私のようにまだしっかりとした酒造りの知識が多くなかった為、殆どが記憶に残っていなかったが、2つだけしっかりした記憶がある!1つはとても清潔な蔵元だった事(未だにこの清潔感と並ぶ蔵元さんは少ない!)とヤブタ圧搾機までも冷蔵室に入れていた事である!
勿論これも20年前から勝木技師の発案で作られた物であるが、私が思うには多分これを初めて行ったのも勝木技師だったと思う。

 

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ここが分析室

 

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ここが「東一」の高級酒が眠る「斗ビン貯蔵」の冷蔵室
そして最後に敢えて紹介するのが「勝木技師の研究室」の内部です!
20年前永谷先生が言っていた言葉ですが「この勝木君の研究室にある機材は国税局鑑定官室にある機材をはるかに上回るスゴイ機材ばかりですよ!」と言う事らしい!!

 

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よく見ると写真中央左側に何故か「而今」が2本見えてますが「而今」の成分分解析でもしているのでしょうか?

 

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勝木技師がオリジナルで培養している酵母の培養が入ったフラスコの山!

 

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KA−01と書いてありますが「KA」は山形酵母なのですが…?これも勝木オリジナル「改・山形KA酵母?」

 

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これが凄い!顕微鏡を覗きながら酵母の数を揃えて培養酵母を造り上げていきます!
これによって安定した発酵に導けると言う事になります!!

以上簡単に「東一」蔵内を紹介していきましたが、見学後応接室に戻り瀬頭社長とゆっくりお話しました。(実は20年振りに来訪した「東一」でしたが、勝木技師は残念ながら大切な出張が入っていて不在で再会する事が叶いませんでした!)
瀬頭社長「東一」の酒について語ってもらいました。それが以下です。
「東一を語る上で欠かせない要素の1つに山田錦と勝木技師が作る優良株を撰技し自社培養した熊本酵母との相性を大切にして、飲み飽きない酒を醸す。その穏やかな香りはどんな料理にも調和し、米の旨みと繊細な酸との絶妙なハーモニーが盃を重ねさせる。これは永谷先生から教えられた山田錦栽培から始まり、一切手抜きをしない手仕事による吟醸造りで醸す酒を「東一」が二十数年にも渡り世に送り続けてきた五町田酒造だからこそ表現させる酒なのです!」

さて、ここまで読むともう「東一」の酒を全種類飲みながら本文中にも何度も登場してくる「勝木技師」に会って色々と日本酒のあれこれを聞いてみたくなったでしょう!!
そこで「酒友」は来月6月4日(土)『東一(佐賀)勝木技師によるお話と東一全種類と料理を楽しむ会』を開催します。詳細は以下をご覧下さいネ!


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